PGAの選考方法~アカデミー賞との共通点

PGA(米製作者組合賞)は、アカデミー賞の前哨戦の中で最も重要だと評されてます。 多数の映画賞の中で、アカデミー作品賞の共通性が最も高いです。 同じ結果になりやすい理由は、選考方式がアカデミー作品賞と同じ「ランキング式投票(順位付き投票/Ranked Ballot/Preferential Ballot)」)」だからです。

「ランキング式投票(順位投票制/Ranked ballot)」とは

この方式は、単に1位の作品を選ぶのではなく、候補作に1位から順位をつけて投票する仕組みです。

  • 集計手順: 1位票が過半数に満たない場合、最下位の作品を脱落させ、その票を「2位」の作品に順次振り分けます。
  • 逆転の仕組み: これを繰り返すことで、最終的に過半数を獲得した作品が勝者となります。

この制度では、一部の熱狂的な支持(1位票)だけを持つ作品よりも、多くの会員から「ベスト3には入る」と幅広く支持される作品が最後に勝ち残ります。PGAとアカデミー賞はこの集計システムが共通しているため、最高賞の結果が一致しやすいのです。

ノミネート段階からランキング式投票(アカデミー作品賞と同じ)

PGAがアカデミー賞の強力な指標となるもう一つの理由は、最終的な勝者を選ぶ時だけでなく、ノミネート作品(候補作)を選出する段階から同じシステムを採用している点にあります。

現在、アカデミー作品賞とPGA賞はいずれも「10作品」がノミネートされますが、その選定プロセスにおいても「優先順位付投票制」が用いられています。具体的には、一定数(マジックナンバー)の1位票を獲得した作品から順に枠が埋まっていく仕組みです。

  • 選考基準の合致: 両賞とも、単に「有名な作品」ではなく、プロの作り手たちが「1位」に推す熱量の高い作品が候補に残りやすい仕組みになっています。
  • 分母の類似性: PGAの会員(約8,000名)の多くはアカデミー会員でもあります。同じ人々が、同じルールで選ぶため、10枠の顔ぶれは毎年驚くほど似通ったものになります。

つまり、「候補作の顔ぶれ」と「最終的な集計ルール」の双方がアカデミー賞と完全にリンクしているのは、主要な前哨戦の中でもPGAだけです。これが、PGAの受賞結果が「オスカーの行方を占う最大の鍵」と言われる所以です。

2010年から導入(アカデミー賞と同時)

この「ランキング式投票」が導入されたのは2010年(2009年公開作品)からです。それまでは、1人1作品を選ぶ単純な「最多得票制」でした。アカデミー賞が作品賞を「ランキング式投票」に変更するのにあわせて、PGAも変更したのです。また、作品賞ノミネート枠も従来の5作品から10作品へと拡大されました。これもアカデミー賞と同時です。

なぜ「グリーンブック」は「ROMA」に勝てたか。
なぜ「コーダ」は「パワー・オブ・ラブ」に勝てたのか

これらの逆転劇は、優先順位付投票制(Ranked ballot)の特性を最も象徴する事例です。共通しているのは、「芸術性は高いが評価が分かれる作品」を、「幅広い層に愛される作品」が逆転したという点です。

  • 『ROMA/ローマ』 vs 『グリーンブック』: 芸術性の高い『ROMA/ローマ』は多くの1位票を得ましたが、一部の会員からは「配信映画(Netflix)」への反発もあり、低い順位に置かれる傾向にありました。対して、誰もが温かい気持ちになれる『グリーンブック』は、1位票だけでなく膨大な「2位・3位票」を集め、集計が進む中で逆転しました。
  • 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』 vs 『コーダ あいのわ』: 前者は監督賞も受賞した傑作ですが、冷徹で難解な作風から「1位か圏外か」という極端な評価になりがちでした。一方、感動作である『コーダ』は、多くの会員が「今年のベスト3」に選んだことで、最終的に過半数を獲得したのです。

このように、優先順位付投票制では「熱狂的な1位」よりも「誰からも嫌われない2位・3位」を多く集める作品が、最後に頂点に立ちます。PGAでこれらの作品が受賞した時点で、アカデミー賞でも同じコンセンサス(合意)が起きていることが証明されたといえます。